Wednesday, January 18, 2012

南極点を去る

まだまだ、南極点で出会った人、面白い発見、すごい冒険など、載せたい写真がいっぱいなのですが、今日、南極点を飛び立って、マクマード基地に戻ってきたので今の心境を忘れる前に書き留めたいと思います。

南極点を去る前夜はまったく寝れませんでした。今まで夜はぐっすり眠れてたのに何でだろう?南極点の生活はお世辞にも快適とはいえませんでした。標高の高さ、酸素の薄さからくる、ちょっとした行動が催す疲労。常に心拍数が高く、息が苦しい。湿度がまったくなく鼻をかむたびに出血し、のどと肌は常にかさかさな上、寒い。どこかへ行く度に着なくてはいけない防寒服の重さ。エネルギー節約のため、一週間に4分しか許されないシャワー。毎日くたくたで、汚くて、不便で、寒くて。人間がいるべきところでないから当たり前と言えば当たり前だけど、文明とシャワーと酸素が豊富なマクマード基地へ帰れるのを実は楽しみにしていました。

今朝は天気があまりよくなく、フライトの心配をしていた上、仕事をまとめ上げなければならず、特別南極点を去ると言うことを考えていませんでした。飛行機が雪の滑走路の上に着陸して、新しく来た人たちが降りて、荷物と燃料が降ろされ、いよいよ私たちが乗る番になりました。(ちなみに南極点へ来る飛行機のほとんどは、できるだけの余分な燃料を積んで、南極点で燃料を落とし、基地は越冬のために備えます)。

同僚の中で私が一番初めに来たので一番はじめに帰ります。みんなが寒い中、お見送りに来てくれました。




すごい経験をみんなでした仲間。お互いのことをさりげなく、でも常に心配しあったみんなと別れるときは涙が出そうになりました。ほとんどの人はあと数ヶ月もすれば、また会えるのになぜかすごい別れのような気がします。一人ひとりとハグして、初めて、「あぁ、私は南極点を去るんだな。もうたぶん二度と戻ってこれない、このすごい場所をあとにするんだなぁ」と実感がわきました。そのとき初めて、最後にもう一度、改めて周りを見渡したのを覚えています。

大変な仕事でも立候補して何度も何度も南極点に来る人たちや南極点が一番落ち着くと言う人たちを知っています。初めてその人たちの気持ちがわかった気がしました。その人たちは南極点というすごい場所にいたい、というよりも、この厳しい場所で一緒に生活するからこそできる仲間意識、戦友との生活が忘れられないんだろうなぁ、と。同僚たちは私が飛行機に乗り込むまで、寒い中、ずっと手を振り続けてくれました。ありがとう。


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